那覇市に本社を構える(株)ホープ設計は、地域に根ざした建設コンサルタントとして、土木工事に関する調査、企画、設計及び測量、地盤・地質調査、施工管理、システム開発等の幅広い業務を手がけている。自己啓発教育や資格取得など人材育成にも力を注いでおり、その一環として遠方にもかかわらず、全国建設研修センターの研修には毎年五名以上の社員を派遣いただいている〈表参照〉。そこで同社の親泊宏専務取締役を訪ね、人材育成の現状やセンター研修に対する評価、要望等をお聞きした。
■まずは御社をご紹介ください。
平成五年に創立して、この五月で十八年になりました。社員数は四四名です。沖縄県の場合、コンサルの数は多いのですが、十数名の小規模なところがほとんどなものですから、規模的には県内五指に入っているかと思います。仕事は県内での発注が一〇〇%です。そのうち、国からは県外のコンサルさんも来ますので年に数件ですね。売り上げで見ても一〇%以下で、九〇%以上は県と市町村の発注です。業務内容としては、長寿命化事業の名のもとに維持管理関係が増えており、最近は三、四割を占めています。あとは斜面防災関係がコンスタントに二割程度あります。
■ずいぶんといろいろな資格を持つ技術者がいらっしゃいます。
そうですね。こういう地方のコンサルなので、何でもやれるように間口を広げておくことが必要ですし、プロポーザルや総合評価では資格の有無が仕事を取るための大きな要件になります。本当はまだまだ資格取得に力を入れなければならないのですが、本土の大手コンサルに比べると環境的にも難しいところがあって、独自に勉強するか、あるいはセンターさんの研修などでモチベーションを上げて帰ってくるか、そういう現状ですね。
■人材育成に関して社内で実践されていることは。
若い人の雇用をつくらなければという地域事情もあって、わが社でも若い社員、未経験の社員が多いのですが、いきなり人材育成や自己啓発のために大きな目標を持たせてもプレッシャーになります。そこで、自分でこれだったらいけるという目標を考えてもらい、年度初めに五分ほどのプレゼンする機会を設けています。たとえば今年はこの資格を取りたい、あるいはこの分野の勉強をしたいという何がしか仕事の面と、ちょっと運動が足りないので週一回ジョギングするとかプライベート面での目標です。そして年度末にその結果をもう一度発表して、達成できたときには手当をつけてあげたり、できなかった場合は理由を考えてもらって自己啓発を促してします。
■自立心を培うということですか。
特に若い社員には目標を楽しみながら自己管理してほしいと考えています。
■社外では研修への参加が中心になりますか。
そうですね。一応、社員一人一人の教育計画をつくっていまして、その中に研修会や技術発表会などを組み込んでいます。センター研修の場合は年初に研修スケジュールがわかっているので、それに基づいて張りつけていくという形です。
■センター研修をどう評価されていますか。
メニューや内容の豊富さもさることながら、全国からいろいろな立場のいろいろな経験を持たれた方が官民を問わず参加されていますので、そこでの情報交換がいい勉強となり、特に若い社員はものすごく刺激を受けるようです。研修後の細かな報告は受けていませんが、講義で使われた教材や資料は一通り回覧して、役立つ内容であれば、みんなで勉強会をすることもあります。
■センター研修に対する要望はありますか。
内容によってはちょっとレベルが高いのかなと思う研修もあって、それが派遣する社員と釣り合っているのか、ちょっと迷うことがあるんですね。毎年、研修計画を送っていただいていますが、それぞれの研修がどういう位置付けでどういう人を対象としているかなど、たとえばホームページでもう少し詳しい情報が取れると参加させやすいと思います。あと講師のプロフィールがあるといいですね。
■今年度は十二部門、九四コースの研修を実施しているのですけれども、それらが一つ一つの商品だとすれば、その魅力や価値を知っていただく工夫がもっと必要なのは感じているところです。
たとえば案内の仕方にしても、研修レベルや内容が一目でわかるような、顧客満足度をより意識したご案内に努めていきたいと考えています。最後に人材育成上どんな課題がありますか。
社員各々の考え方や経験を念頭に入れながら、この分野で強くなってほしいという思いで配属を考えていくのですけれども、世の中の需要が変化してその分野の仕事が来なくなる場合があります。それでも勉強を続けさせるだけの余裕があればいいのですが、どうしても別の技術修得にシフトさせなくてはいけない。その辺りが仕事との兼ね合いで人材育成の難しいところです。あと今後底上げしたいスキルとして感じているのは、相手に対して伝える力、プレゼンテーション能力です。最近は官の側で住民説明をやると、われわれもワークショップ等で参加する機会が増え、ファシリテーターの役割が求められています。それは頭の固い技術者ではできませんね。ですから、センターさんの「建設プレゼンテーション・スキル研修」にも参加して、状況に応じて機転が利き、細かいところにも気配りのできる人材の育成に努めているところです。
■本日はたいへん有意義なお話を聞くことができました。
ありがとうございました。
(取材日・平成二三年十月十二日)
技術部設計課照屋 盛一郎
昨年設計グループに異動して、上司の勧めもあり、設計の基本ともなる仮設工について学びたいと思いました。最初は講義についていけるか不安でしたが、講師のお話は専門的な内容も事例を交えながらの解説で分かりやすく、今後の実務に役立てられるものが多いと感じました。センター研修は座学だけでなく、現場研修も入っているのが魅力です。それから相部屋というのもいいですね。近い年代で割り振られていますので話しやすく、いろんな意見交換ができて楽しいです。異動したばかりでまだ仕事は報告書づくりなどが主ですが、具体的な設計に早く携わりたいと思っています。今回の研修はその一つのステップとして有意義でしたし、また機会があればぜひ参加したいです。